『たぶん戻って参ります／前園直樹グループ』：03'54''：So-net blog

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『たぶん戻って参ります／前園直樹グループ』　[ピチカートファイヴ] [編集]

こんばんは。
ピチカートファイヴに続いては、前園直樹グループ。
最近の小西康陽さんのバンド活動から。

これまでアルバム二枚をリリースしていますが、
初のシングルはアナログ7インチ。
そして初のオリジナル曲『たぶん戻って参ります』。
作詞は小西康陽さん、そして作曲はキリンジの堀込高樹さんという非凡なソングライターによる共作です。
このシングルリリースの経緯は、
鹿児島県にあるグッドネイバーズというギャラリー／カフェにて、DJ／エディター／クリエイターのミズモトアキラさんが定期的に開催しているイベント「HOME GROWN」での別々の回にお二人がゲストとして参加したことから始まります。
作詞講座として小西さんがイベントに集まったお客さんたちが考えた作詞の断片をまとめて歌詞を作り、
後日、高樹さんがその歌詞にメロディをつけてイベントで発表されました。
完成した楽曲を前園直樹グループが演奏し、シングルリリース。
企画モノです。

ここでキーワードとなるのは「鹿児島」。
イベントの主催地のご当地ソングと云えますね。
歌詞に鹿児島の風情がたおやかに織り込まれています。
「たぶん、戻って参ります」と、はっきりとは云えないけれど、貴女のいるふるさとへきっとまた戻ろうとする男の気持ち。
慕情を込めて。
その歌詞を優しく包み込む鹿児島の風土に溶け合った温暖で風通しの良いメロディ。
さらに郷土愛のこもった鹿児島出身の前園直樹さんのしみじみとした歌唱。
故郷に錦をさりげなく飾るような。
堀込泰行さんの歌声にも似てますね。
ジャズバラード風なしっとりと懐の深いグループの優雅な演奏。
いい歌です。
伊藤柱司さんによるノスタルジックで晴れやかなアートワークも素晴らしいですね。

B面は「いとしのマックス」。
ご存知、僕が大好きな荒木一郎氏の名曲。勿論このブログで紹介済み。
日本での自作自演歌手の先駆け。
小西さん、高樹さんの先輩とも云えなくもないです。
前園直樹グループのコンセプトのひとつは日本に残された歌謡曲／ロックの名曲を取りあげることをが上げられると思いますので、まさにうってつけの大ネタと云えます。
アレンジャーの小西さんはシャープなビバップ歌謡に仕上げています。
ゲストミュージシャンに藤田淳之介さん（サックス）、喜多形寛丈さん（ピアノ）を招いて、サックスとトランペットを配したオーソドックスなジャズセクステットによるソリッドなアンサンブル。
とっても素晴しいカヴァーでこれまで星の数ほど存在するこの曲のカヴァーの中でも出色の出来映え。
アーバンでアンダーグラウンドなムードを湛えた前園直樹グループによる「いとしのマックス」は、荒木一郎さんがひょっとしたら本来イメージしていたサウンドに近いかもしれません。
何故なら荒木さんは十代のお若い頃はジャズドラマーとして活動をされていたからです。

実に素晴しいA面とB面を配したご機嫌なシングルです。
タイプが光と影のように異なりますが、どちらも「♪ルルル〜」「ラララ〜」、とか「♪ドゥ〜ドゥドぅドゥドゥ〜」とかスキャットが効果的に使われていて印象的です。

アナログ盤ですが、ダウンロード配信もされていますので気になった方は是非、お聴き下さい。
そういえば、キリンジの面白い企画アルバムがリリースされますね。
兄弟それぞれのソングライターとしての側面にスポットを当てた内容だそうで。
元春の「ソングライターズ」に出演した影響もあるのかな。

ユニークな文化の発信が大都市に偏りがちですが、このような地方から新しい価値観を持ったイベントや作品が生まれることはとても有意義ですね。
これからもこう云うことが各地で起きることを期待します。

『たぶん、戻って参ります』《GNHG-001》〈作詞：小西康陽／作曲：堀込高樹／編曲：小西康陽〉（04’31’’）【2011】