『Ruby/Great 3』 [ロッテンハッツ]
こんばんは。
調子に乗ってGREAT 3活動再開記念を祝し、シングルを取りあげましょう。
前回の「Quincy」に続くシングル、「Ruby」 。
この曲も大好きですね。
GREAT 3の楽曲の中でも個人的に上位にランクインします。
「May and December」に続き、アルバム「When you were a beauty」はジョン マッケンタイアと組んで、彼の全面プロデュースの元、初の海外レコーディングを敢行。
ジョンのお膝元、シカゴはSOMAスタジオでシカゴ音響派の協力を経て完成。
GREAT 3の最高傑作との呼び声の高い一枚となりました。
そのオープニングを飾る名曲です。
この曲には、
片寄明人さんのソングライティングの真価と深化を感じずにはいられません。
これぞ彼の本領発揮。
美しいものと醜いものが同居する歌。
胸を掻きむしるようなメランコリックなメロディと
キリキリと胸にナイフを突きつけられるような痛みを帯びた歌詞。
徹底的に救いのない世界をドライにスケッチするコトバ。
海外の翻訳小説風なタッチで。
乾いたペシミズム。
この曲はイントロから鬼気迫るモノを感じます。
ジャーンとアコギのストローク一発から、
「国道沿いのホテルを…」と歌い出す片寄さんの低音を意識した声色から、ゾクッとします。
覚悟を感じさせるハードな響き、感覚。
♪国道沿いのホテルを/右手に曲がった
記憶の抜け殻が/カーブで火花上げた
車を運転している主人公の脳裏を巡る絶望一直線な心象風景。
それに伴ってドラマを演出する演奏もスリリングな疾走感を如実に表現しています。
激しい心臓の鼓動のようにタイトな8ビートを刻む高桑さんのベースと白根さんのドラム。
高桑さんのベースラインのグルーヴ、凄いです。
荒ぶる白根さんのドラムのフィルイン。
そしてクールかつメロウなフレーズをブロウするホーンセクション。
トータスのジェフ パーカーの指揮による、やるせない調べ。
楽曲の世界を理解する素晴しいシカゴのミュージシャンたち。
♪愛の回路(サーキット)/心から血が流れ出して止らない/
精神に重傷を負いながら、あてどもなく走り彷徨う男。
まるで映画のワンシーンをヴィヴィッドにイメージさせるドラマティックな音楽。
片寄さんの非凡なソングライティング。
何度聴いても胸が高まります。
こういう曲は彼にしか書けないでしょう。
今回のシングルは「Ruby」1曲のみで、
シングルにデフォルトのこの曲のカラオケが収録されているのですが、
なんとオリジナルのインストゥルメンタル(ヴォーカルトラック抜き)ではなくて、カラオケ店で使用されているようなリアルのカラオケが入ってます…。
機種名はDAMなり。
チープなシンセのプログラミングで構築された、画一的な音響が不健康な密閉感のある部屋に響き渡るようです。
ポロン、とイントロのアコギの音も薄く淋しい。
1曲目のオリジナル音源との対比がせつない。
ガイドメロディの余計な配慮が悲しい。
これはGREAT 3 ならではのブラックユーモアでしょうね。
このバンドとカラオケはあまり結びつきがないですから。
第一興商さん、ありがとう。
そしてとどめの3曲目は「Ruby」の着メロバージョン。
着うたではなく、これまたチープな電子音でサビの旋律を奏でます。
音色は3つです。
毒を喰らわば皿まで。
冗談はさておき。
「May …」がシンプルな3人のアンサンブルを基本としてミニマムな音像で独自の世界を構成したのに対し、続く「When you …」ではシカゴでのクリエイティヴな環境のもと、ヴァラエティに富み、スケールの大きなサウンドが展開され、さらに深化したGREAT 3の魅力を余すこと無く引出しています。前者が水彩画のスケッチなら,後者は大きなタブローに描かれた油絵です。
どちらも味わい深い名画に変わりは無いですが、「When you were a beauty」は掛け値なしの傑作です。
CDの帯のレコメンド文に偽りは無しです。
“メロウネスとタフネスがせめぎ会う、Great 3の魅力が凝縮された歴史的大傑作”。
悲しみで悲しみを浄化する。
ロックンロールという名のカタルシス。
10年前に作られた素晴しいアルバム。
まだ聴いたコトのない音楽ファンは是非。
『Ruby』《TOCT-4343》〈作詞・作曲・編曲:Great 3〉(03’45’’)【2002】
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