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『愛のさざなみ/島倉千代子』 [歌謡曲/60年代]

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オハヨウゴザイマス。
そんでもって、「愛のさざなみ」です。
カーネーションによるカヴァーのオリジナルも取りあげない訳にはいきますまい!

島倉千代子さんの歌手生活15周年記念シングル。
浜口庫之助氏によるロマンティックな珠玉のラヴソング。
大衆の耳に馴染み易い、たおやかに美味しいメロディ。
作詞のなかにし礼氏が綴る、恋におちた女の深く熱い慕情をオブラートにつつんで。
神にもすがる思いで、恋の成就を祈るおんな。
私が嫌いなら、静かに消えて欲しいと呪うおんな。

♪ああ湖に 小舟がただひとつ

と云うフレーズ、湖に浮かんだ一隻の小舟。
それは愛という、さざ波に揺られ、流される儚い身の上を例えているのでしょうか。
日本語の響きの美しさも印象に残ります。

そしてこの曲を演奏をしているのがボビー サマーズと彼のグループ。
海外のミュージシャンを招聘して演奏を録音するという行為は当時としては異例なことだったのではないでしょうか。特に歌謡界では。
どのような経緯でこのようなコラボレーションが生まれたかは不勉強につき存じません。
ときは1968年、グループサウンズ ブームの猛威が歌謡界へも押し寄せていたころ。
女性歌手のバッキングをGSが担当する《ひとりGS》のヴァリエーションの一つとも考えられますね。
歌謡曲的なメロディをドラム、ベース、ギターの3リズムで演奏し切っているのが特色と云えましょう。ボビーとそのグループによるミディアムテンポの確かな演奏。
ボビーさんの穏やかなエレキギターの音色。
しっとりとせつなく奥ゆかしい、島倉千代子さんの歌声を丁寧にバッキング。
♪pa 、pa、 pa、 pa… という島倉さんと思しき女性コーラスも透明感があって清廉な響きで楽曲に花を添えています。
歌謡曲にありがちな粘着質が削がれて、ソフトで上品な甘さが香ります。
和と洋のテイストがいい塩梅にまざりあった歌謡曲の逸品。

僕がこの曲を初めて聴いたのは、80年代中期に桑田さんやユーミンが出演したTVのクリスマスの音楽特番でした。
様々な当時の人気ロックアーティストがこの番組の為に共演してユニークなMVを残しました。
「愛のさざなみ」は確か、ユーミンとアン ルイスさんとキョンキョンの3名で艶やかにカヴァーされていました。何と云うか、大人の歌謡ポップスだなぁ、と思いました。

そしてこの曲の演奏/編曲担当のボビー サマーズさん。
ジャケットにも写っています。
この方の正体は謎に包まれているのですが、
プロデューサーやマニピュレーターとして有名な藤井丈司さんのツイッター情報によると、
ボビーさんは、かのレス ポールの奥さんであるメリー フォードさんの弟らしいです。
現在もご存命でギタリストとして活躍中とのこと。
う〜ん、
まさに人生いろいろ。

B面は「月のためいき」。
こちらもボビー サマーズと彼のグループによる演奏。
ハマクラさんは作曲のみならず作詞も担当しています。
三拍子のリズムに乗ってマイナー調のもの悲しい調べが漂います。
この曲ではイントロからボビーさんのアコースティック ギターの演奏がフィーチュア。
歌謡曲風な楽曲ですが、繊細なバッキングによって海外のポップスの響きがします
島倉さんの歌唱の魅力、月明かりのように少し憂いを含み情緒豊かで。
愛に溺れるおんなの健気な気持ちを掬っています。

こういう曲を聴くと日本の歌謡曲の特異性が如実に理解出来る気がします。
楽曲、アレンジ、歌唱のどれをとっても優れています。
今聴いても古くささは皆無だし。
音楽にジャンルは関係ないとも云えます。
そんな名曲をハードなロックアンサンブルで再演したカーネーション。
女性が主役の唄を、男性の直枝さんがファルセットで歌うのがアブノーマルで良いですね。
歌も演奏も、歌詞に秘められた恋への尋常じゃない思いを開放しています。
カーネーションのGS魂が爆発していると云えます。
ハマクラさんは1990年にお亡くなりになりましたので、その追悼の意味もあったかも知れません。

さらに蛇足ですが、
前回のピチカートの話の続きにもなりますが、「天国と地獄」「スウィート ピチカートファイヴ」がリリースされた1992年当時、小西さんもハマクラさんの作品にハマっていたことを思い出しました。
同じく前回触れた「コズミック ブルース」の歌詞に
♪もしも神様がー本当にこの世にいるならー今すぐここに来てー私の機嫌を直して
という一節があって、「愛のさざなみ」を意識していたのかな、と深読みしたりして。
ちなみにこの曲の歌詞は「サザエさん」で有名な漫画家、長谷川町子さんの訃報からインスパイアされたというのはピチカートマニアでは知られた話。

さあて、来週からの「03'54''」は?
久しぶりのアニソン特集です。
お楽しみに…。

『愛のさざなみ』《SAS-1138》〈作詞:なかにし礼/作曲:浜口庫之助/編曲:ボビー サマーズ〉(03’06’’)【1968】


浜口庫之助メモリアルコレクション100

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 2007/11/21
  • メディア: CD



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コメント 2

ノリ

桑田&ユーミンが出演したのは日テレの「メリーX'masショー」でしたっけ。
「愛のさざなみ」を初めて聴いた時は驚きましたね。
暗く淀んだ歌謡曲の世界(嫌いじゃないけど)とは一線を画した洋楽テイストの歌謡曲。
ハマクラ先生の「軽み」はさすがの一言ですね。
by ノリ (2012-06-22 01:12) 

都市色

>ノリさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
「メリーX’マスショー」ご覧になっていたのですね。
僕もあの時聴いて、当時の歌謡曲にはない魅力を感じました。
京平先生の「くれないホテル」にも同じ感覚がありました。
ハマクラさんもお洒落。
音楽の「軽み」、良いですね。
昭和の作曲家の先生方はどなたも豊かな音楽経験が基本にあるのでしょうね。
by 都市色 (2012-06-23 10:19) 

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