『初恋／Base Ball Bear』：03'54''：So-net blog

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『初恋／Base Ball Bear』　[邦楽ロック10年代] [編集]

こんにちは。
本日取り上げるのはベボベことBase Ball Bear。
彼らの作品を紹介するのは「神々Looks You」以来、久しぶりです。

今回の彼らの作品は一般的には〈ミニアルバム〉というカテゴリーに入り、その表現形態にありがちな企画モノでありまして、ユニークな趣向が凝らされています。
しかし、誠に勝手ながら拙ブログでは〈シングル〉としてして扱わせていただきます。
だってこの作品の初回盤はアナログのEP盤サイズの１８センチ×１８センチの紙ジャケなんだもん！

そのユニークな企画のひとつが、〈コラボレーション〉。
このCDの冒頭の３トラックがそれに相当します。

一曲目はタイトルソング「初恋」。
プロデュース＆アレンジに玉井健二氏を起用。
玉井氏というと、agehasprings というサウンドクリエイター集団の代表的人物。
女性アーティスト、男性アーティスト、バンド系、アイドルポップス系などJ-ポップ界で多岐に渡って活躍しています。
Tomato n' pineの最近リリースされた１stアルバムでの仕事に大いに感動しました。
多分、アイドルファンの小出祐介氏にも賛同頂けると思います。

恋をする度に「初恋のような」高揚感に見舞われてしまうキモチ。
ベボベらしいストレートでパワフルな情熱熱風青春ソングに仕上がっていますが、映画の主題歌〈図書館戦争〉に使用されるだけあって、アレンジが派手になっています。
これでもかこれでもかと、イントロやサビへの直前のブレイクが長かったり、エンディングもドラマティックだったりして演奏時間６分の超大作。
玉井さんの手腕でしょうか。

二曲目は「ぼくらのfrai awei」。
この曲では何と、小出氏が前山田健一氏と共同で作詞作曲を行っています。
ももいろクローバーZをはじめ、さまざまなアイドル、声優への旺盛な楽曲提供、そしてプロデュース業、
さらにご自身としても“ヒャダイン”としてソロ活動も活発な前山田氏。
アイドル系テレビ情報誌「B.L.T」での小出氏の連載にて前山田氏との対談が掲載されていましたが、
とても意気投合していたのを記憶しています。
こういう有名人同士の共作は得てして、予想ほどの成功例は多くないのですが、
実になんともツーカイな極上のパワーポップに仕上がっています。
メロディの弾けっぷりがハンパないです。
こっちをシングルのタイトルチューンにすれば良いと思いました。

ギターで作曲する小出氏と鍵盤で作曲をする前山田氏。
作曲方法は異なりますが、サウンドや音楽の好みは似ているので共作は上手くいったのではないでしょうか。
お互いの良いとこ取りって感じです。
共通といえば、この曲で歌われている世界にも感じられます。
前のめりにポップなサウンドと裏腹に、歌詞はオフビート。
価値観を共有できる友人が少なく、女子にもモテなかった学生時代。
報われない十代を過ごされて来たという、お二人の心の傷の痛みをポップに笑い飛ばすユーモアのセンスが良いですね。
タイトルの「ぼくら～」とは“ボンクラ”と同義。
まさに僕がそうでした。
休み時間、机に伏せてひとりでフリッパーズギターをWalkmanで聴いているような奴。
この曲では、あの頃の愚かさやイタさや勘違いっぷりを見事に描いていて、共感して苦笑いしちゃいます。
小出氏の歌い方もダメッぷり１００%。
傷だらけのこの歌の世界においての関根史織さんのワンポイントヴォイスはさらにキュンと響きます。

十代を暗黒時代のように過ごしている人はどうかこの曲を聴いて何とか生き延びてほしいと思います。
音楽とか漫画とかゲームとか好きなもの見つけて、それに耽って何とかやり過ごしてほしいです。
学校なんて休んだって良いと思います。
積極的逃避も大切だと思います。

三曲目は「君はノンフィクション」。
最後はなんとアレンジ＆プロデュースを岡村靖幸さんが担当。
やっぱり青春といえば岡村ちゃんでしょ。
この曲は歌詞から読み解くに、かつて付き合っていた女の子がAVに出ていた、というショッキングなラブソング。
これほどアダルトビデオが身近にあり、毎月無数に新作ソフトがリリースされている実情を鑑みればこのようなことが起きてもおかしくはないと思います。It's not unusual thing. よくあることサ。
このシングルの特殊パッケージはジャケットだけじゃなく、歌詞カードも凝っており、この曲ではVHSのビデオテープに貼るラベルシールの裏側に歌詞が掲載されています。もちろんラベルには「君はノンフィクション」と書かれています。
このシングルのジャケットの写真を取ったのがAV監督のカンパニー松尾氏というのも偶然ではありません。
それはそれとして、
小出氏による偏愛的な妄執に悶絶する歌詞の主人公の心の叫びを岡村プロデューサーは見事に音楽で開放しています。
シンセサイザーを導入したエレクトリックなサウンドだけじゃなく、小出氏のよりフィジカルな歌唱も光ります。
岡村ちゃんの歌い方が少し憑依してます。

♪　君はノンフィクション　かなしいほど微笑む４：３のなかで
　　君が追いかけたあの夢は　どこへ行ったのだろう
　　Baby, YOU are NONFICTION つらいけど　けがれた花は、より美しい
　　僕が追いかけた　君の花が　舞い散るさまをただ見てた
　　もう止められないこと　わかっている

自分の十代の頃をフラッシュバックさせるような３曲だけでも充実した内容ですがCDはまだまだ続きまして、もうひとつ〈企画〉があります。
今年五月に赤坂ブリッツで開催されたライヴ音源〈Tour 深呼吸〉が６０分近く収録されています。
しかし、ここでは思い切って割愛させていただきます。
勿論、濃厚な熱いライヴです。
そういえば、前回のキリンジも大量のライヴ音源を収録したシングルを過去にリリースしていましたね。

『初恋』《TOCT-２２３１６》〈作詞・作曲：小出祐介／編曲：玉井健二＆Base Ball Bear〉（０５’４９’’）【２０１２】