SSブログ

『WOMAN/フランク永井』 [歌謡曲/80年代]

スキャン0133.jpg


こんばんは。
ハイ、“俺のラグジュアリー歌謡”の時間の時間でございます。

今夜はフランク永井さんの1982年のシングル『WOMAN 』。
この曲がガイドブックに取り上げられなかったのが不思議で不思議で仕方がなかったです。
いつ紹介するの?
今でしょ!
 ちょっと書いてみたかっただけです。
もうこの曲は言わずもがなの名曲、基本だからでしょうか。
あの本は重箱の隅を突き捲くってましたからね。

このシングルは何と山下達郎さんがプロデュースしています。
作詞・作曲、そして編曲。
’82年というと、アルバム『For You 』が大ヒットを飛ばしていた頃。
まさに大ブレイク真っ只中の上り調子なタイミングでの作品。
ジャケットもなんとなく鈴木英人調。

30歳直前の達郎さんが50歳のムード歌謡界の大物歌手へのプロデュース作。
当時としても異色の顔合わせでしょうね。
ジャンルの異なった音楽志向のミュージシャン同士のコラボレーションは難しいものですけれど、
果たして仕上がった楽曲は歌謡ポップス史に残る名曲でした。

七色のたそがれが降りてきて、有楽町へ。
夜空の星の瞬きに溶け込む都会のイルミネーションのようなオーケストレーション。
サックスのダンディなブロウ。
魅惑のイントロにワクワクします。
端正なサウンドを粋に着こなす永井さんの歌声。
しなやかなメロディを歌いこなすジェントルで伸びやかなバリトン・ヴォイス。
朗々と深みがあって広がりがあって、聴き惚れてしまいます。
男の色気がありますね。
この曲を若い頃に聴いたときはあんまり良さが判りませんでしたが、今はとても気に入っています。
永井さんの歌声も凄いし、達郎さんのサウンドも負けずに凄い。
絶妙にマッチして、都会的でマイルドな歌手の魅力を引き出すことに成功しています。
達郎さんのレコーディングでお馴染みの青山 純&伊藤広規両氏のリズム隊も参加。
ストリングス・アレンジは乾 裕樹氏。
唯一無二の歌とサウンド。
素晴らしいですね。

達郎さんは永井さんのシングルを手掛けるにあたり、60年代から活躍する、米国はシカゴ出身のR&Bシンガーのルウ・ロールズをお手本にしたと聞いたことがあります。
いぶし銀の低音が特徴で、スタンダード曲やポップス曲も歌いこなしているベテラン歌手でした。
Woman 』もコテコテのR&B風というよりはミドル・オブ・ザ・ロードな曲調。
当時のレコーディングを振り返ったとき、永井さんは16ビートに手こずっていたと達郎さんは壊述していました。
永井さんはジャズ中心の4ビートの曲ばかり歌っていらしたので16ビートは初挑戦だったそうですが、克服して完璧に歌い上げています。



この曲を熱唱するフランク永井さんを一度だけ観たことがあります。
CSの「夜のヒットスタジオ」の再放送で数年前に。
何気なく観てたら偶然に永井さんがこの歌を歌うシーンに出くわしました。
ビックリしました。
そして痺れました。
堂々たる貫禄、歌謡界の帝王の歌唱。
歌い終わる頃には永井さんの後ろのひな壇で歌を聴いていた出演歌手の皆さんも大いに沸いていたような記憶があります。
若々しかったです。
ああ、もう一度観たい映像。
また夜ヒットの再放送やらないかしらん。

B面は『愛のセレナーデ 』。
こちらは作詞:伊藤銀次、作曲・編曲:達郎さん。
このコンビというと、『Down Town』ですよね。
何と作られたのも同じく70年代。
銀次さんと達郎さんがコンビを組んで作曲していた時代のアウトテイク、未発表作品だそうです。
Down Town 』がキングトーンズの為に作られたことはファンならご存知だと思いますが、
愛の~ 』もキングトーンズ用に用意された楽曲だった訳です。
メロディアスでミディアム・バラード。
ゆったりと大らかに包み込む、ヴェルヴェットの低音が静かにハートを揺さぶります。
ファルセットではなくバリトンで歌われるスウィートソウル。
ムーディでアダルトテイストな楽曲なのでフランク永井さんが歌っても十分にマッチしています。
両面とも違いの判る大人のラヴソングです。

このとき永井さんは50歳。
今の歌謡界を見渡してもこのような歌声を持っている人はいなくて。
50代のロックミュージシャンは多いですが、永井さんの様なヴォーカルスタイルの人はいなくて。
時代も違うのかもしれませんが、10年20年違うだけでこうも歌唱スタイルに隔たりがあるのが不思議ですね。
声という楽器は代替不可能。
時の流れの早さを痛感します。

この曲を聴いて思うのは、達郎さんのプロデュース能力の高さ。
歌謡曲も演歌もロックもジャズも分け隔てなく接する、音楽に対するフレキシブルな思考。
だから永井さんの魅力を殺ぐことなく、達郎さんが理想とするサウンドを築いています。
歌謡曲とかロックとか関係なくイイ曲です。
作曲だけでなく、アレンジ、プロデュースまで手掛ける達郎さんの作品は間違いありません。
この2曲は永井さんの音楽キャリアにとって異色であることは間違いはないですが、異端でもないと思います。
大ヒットはしませんでしたがこれまでの作品に比べてチャートアクションは良好だったそうです。

永井さんにとってこの楽曲への見事なアプローチはその後の音楽活動をさらに広げる可能性を十分秘めていたと思います。
しかし不運にもその希みは潰えてしまいました。
’85年に起きた自殺未遂のニュースは当時話題になり、小学校だった僕も良く覚えています。
一命は取り留めたものの芸能界へのカムバックは果たせませんでした。
同年、坂本 九さんの飛行機事故での不慮の死もあり、歌謡曲界にとって大きな損失が重なった一年でした。
時代の変わり目だったように思います。

尚、今回のシングルの2曲は『山下達郎作品集 Vol.1 』に収録されています。
達郎さんのファンクラブを通じて購入できます。
入会していなくてもオフィシャルサイトからどなたでも入手できます。

WOMAN 』《SV-7222》〈作詞・作曲:山下達郎/編曲:山下達郎・乾 裕樹〉(03’36’’)【1982】


歌声よ永遠に~フランク永井のすべて(DVD付)

歌声よ永遠に~フランク永井のすべて(DVD付)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2009/02/25
  • メディア: CD



フランク、ジャズを歌う

フランク、ジャズを歌う

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2009/03/25
  • メディア: CD



nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 4

いとぞう

う~ん、大人のポップス・大人の歌謡曲ですね~。痺れます。
達郎さんとの組み合わせは一見、意外だけど、曲を聴くと納得です。
本人にとってもこれから新境地というところだったのに、その後は残念でしたよね。自殺未遂のニュースは、「週刊誌の報道が人の人生を狂わせることがある」ことを最初に思い知らされたのでよく覚えています。
ところで元春が某番組に出演した際、「日本人歌手で最も歌がうまいのは誰?」との質問に「フランク永井!」と即答してました。
by いとぞう (2013-04-08 18:38) 

都市色

>いとぞうさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
ガキの使いでしたっけ、元春が答えていたのは。
国際フォーラムのライヴ前の客入れBGMで『有楽町で逢いましょう』を流していたのは覚えています。
元春も雪村いずみさんとデュエットソングを出したり、大滝さんが小林 旭さんやクレイジーキャッツを手掛けるのと何か似たアプローチを感じました。

by 都市色 (2013-04-09 23:19) 

ノリ

ボーカリスト・フランク永井は現役時代は特に何も思わなかったけど、後に稀有な存在だなと思いました。
都会的で臭みがなくて。
達郎作曲「WOMAN」はワタクシ知ってたけど、実はCS夜ヒット出演分は見逃してるのです。
もう再放送しないのかな…でもするべきです。
いつやるの?今で…しょ…。
by ノリ (2013-04-12 18:20) 

都市色

>ノリさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
子供の頃ではフランク永井さんの良さは判るはずもないでしょうねぇ。
その存在感は今の音楽シーンを見るにつけますます痛感します。
まだまだ歌い続けて欲しかったと思いますね。
夜ヒットの再放送、是非再開して欲しいです。
by 都市色 (2013-04-14 13:06) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。