『Give The Little Man A Great Big Hand / William DeVaughn』 [ソウル/70年代]
こんばんは。
逝ける人を偲んで、シングルを紹介しています。
訃報の記事が続きます。
ヴィブラフォン奏者のヴィンス・モンタナ氏が四月にお亡くなりになりました。
85歳でした。
フィラデルフィア出身で、MFSB、サルソウルオーケストラのメンバーであり、作曲家としても活動。
70年代のディスコブームを牽引したフィリーソウルの名プレイヤー。
ヴィンス・モンタナ氏については音楽評論家の吉岡正春氏のブログ記事に詳しいです。
ヴィブラフォンという楽器が好きです。
鉄琴の一種で、グロッケンシュピールと似ています。
優しい金属音。
木琴よりも涼しげな響きで。
楽器に付いている長い筒によってエコーがかけられます。
その音の余韻が味わい深く。
不思議な音色がします。
なんとなく夜の雰囲気がします。
’50～’70年代の日本映画にて、キャバレーやクラブ等、ありがちな夜の社交場の場面で聴こえるBGMの中に鳴っていたりします。
ジャズ風な演奏の中、雰囲気を醸し出して。
真夜中の楽しい雰囲気にも、うらぶれた雰囲気にも合うのです。
ジャズ～ソウル界には素晴らしいヴィブラフォン奏者が多くいます。
ライオネル・ハンプトン、ミルト・ジャクソン、カル・ジェイダー、ロイ・エアーズ等々。
大学時代にソウルやジャズが好きになってヴィブラフォンを益々好きになりました。
やはり山下達郎さんや小西康陽さんの影響が大きいです。
そういえば、お二人の作品にもヴィブラフォンはよく使用されますね。
達郎さんの場合はグロッケンが多いですが。
そんな訳で僕がヴィブラフォンの魅力を知り始めたきっかけのシングルを。
ウィリアム・ディヴォーンの『Give The Little Man A Great Big Hand 』です。
彼の曲は以前にも紹介しています。
どちらもアルバム『Be Thankful For What You Got 』に収録されています。
フィリーソウルの魅力が詰まった隠れた名盤のオープニングを飾る曲でもあります。
アイズレーブラザーズの『If you were there 』や、スピナーズの『I'll be around 』に通じる、重量感のあるドラミングに導かれるイントロ。
オーディエンスの喝采のSEに包まれて。
エレクトリックギター、ベース、ハモンドオルガンのリズムが彩るミディアムグルーヴに乗って、
ウィリアム・ディヴォーン氏と女性コーラスが歌に込めるメロウでしなやかなフレーズ。
ソウルミュージックの持つホーリーなオーラが楽曲から放たれます。
♪ その小さな男に 大きく逞しい腕をお与え下さい
キリスト教の無垢で抽象的なメッセージ。
ジョン・デイヴィス氏による素晴らしいアレンジ。
聴いていて心が穏やかに開放されます。
そして、
サウンドの中に埋没せず、弾むリズムの上をジェントルに転がるように響くヴィブラフォン。
勿論、ヴィンス・モンタナ氏の演奏です。
都会の街明かりのような優しい瞬きを残します。
中盤～後半での彼のソロ演奏に耳を傾けて欲しいです。
至福の音。
僕が所有している7インチバージョン(演奏時間は03'53'と表記されています。惜しい！')はアルバムバージョンより短くエディットされていますが、モンタナ氏の演奏はバッチリ楽しめます。
B面は『Something's being done 』。
先述のアルバムのB面のラストを飾るに相応しいピースフルなミディアムソング。
こちらもA面と同じリズムが刻まれています。
♪ 悲しみの終わりに向かって 何かがなされようとしている 我々は もう心配する必要はない
フルートのモダンで暖かい音色がサウンドの中を漂います。
そしてこの曲でもヴィブラフォンのひんやりとした心地よい音色がこだまします。
マーヴィン・ゲイに通じる、瑞々しいソウルネスを湛えたウィリアム・ディヴォーン氏の歌声とソングライティング。
名盤のオープニングとエンディングの2曲。
フィリーソウルの名門、シグマスタジオでの録音。
名脇役、ヴィンス・モンタナ氏のヴィブラフォンの音色はスウィートなフィラデルフィア・ソウルのサウンドの溝にいつまでも刻み付けられています。
因みに、このブログでは、モンタナ氏が関わったシングルとして、エディ・ホールマンの『Hey There Lonely Girl』を紹介しています。
この曲も掛け値なしの名曲ですよね。
ヴィンス・モンタナさん、
どうぞ、安らかに。
『Give The Little Man A Great Big Hand 』《RB-2005》〈Written by William DeVaughn /Arranged by John Davis〉（03’54’’）【1975】
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Collectables
- 発売日: 1993/04/14
- メディア: CD
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