『アイドルばかり聴かないで/Negicco』 [ピチカートファイヴ]
こんばんネギネギー。
さぁ、おまっとさんでした。
Negiccoの今年2枚目のシングル『アイドルばかり聴かないで 』。
タイトル曲はナント、小西康陽さんのプロデュース!
この新曲のリリースのアナウンスがされた途端、体に電流が流れだすような興奮を覚えました。
遂に来たかって感じです。
西寺郷太(ノーナ・リーヴス)氏による前作『愛のタワー・オブ・ラヴ』も話題になりましたが、
それ以上の高揚感。
小西さんがアイドルソングを手掛けるのは林 未紀さんの『アイドルになりたい。』以来、6年ぶり!
・・・でもないか。
コイズミさんの昨年出たアルバム『Koizumi Chansonnier 』にも『面白おかしく生きてきたけれど 』という曲を書き下ろしていまして、それもアイドルソングと言えば、アイドルソングでした。小西さんらしい素敵でユニークな作品。
最近の現役アイドルへの楽曲提供としては久しぶりな訳です。
『アイドルになりたい。』以来のアイドルソングが『アイドルばかり聴かないで 』。
このタイトルで思い出すのは、フランスギャルの『N'ecoute Pas Les Idoles 』(1964)。
日本語タイトルが『アイドルばかり聞かないで 』。
セルジュ・ゲンズブール氏による、マイナー調のフレンチポップスの同名異曲(漢字が少し違いますが)という訳であります。
『愛のタワー~ 』と同時発売となり瞬く間にソールドアウトした『圧倒的なスタイル』のアナログ7インチは小西さんからのリクエストを受けて発売された企画だったそうですが、
今回の楽曲提供は小西さんによるもう一つのリクエストだそうです。
こういう縁って素敵ですね。
ビジネスライクな関係ではなく、音楽の繋がりで新しい音楽が生まれていく世界。
てな訳で、『アイドルばかり聴かないで 』。
タイトルからして、小西さんらしいユーモアが効いています。
これぞ21世紀のアイドルソングの決定版!
それでは、
アイドルばかり聴いている僕がレヴューする『アイドルばかり聴かないで 』。
イントロから切り込んでくるストリングスの軽快なフレーズにまず耳を奪われます。
思わずリズムをとりたくなる弾むビート。
クラヴィネットのフレーズもいい感じ。
2小節目終わりから入ってくるベースラインもグルーヴィ。
70年代のディスコサウンドをスタイリッシュにエディット。
ストリングスとブラスは生を使っているのも効果的だと思います。
今回のシングルについて、小西さんが“<私の中の筒美京平>が暴発したような作品です”というコメントを残されていますが判るような気がします。
郷 ひろみさんの『恋の弱味』を思い出しました。
京平先生がピチカートに書き下ろした『恋のルール・新しいルール』にも似ています。
アレンジは小西さんだし。
そしてキュートでキャッチーな小西節。
歌詞とメロディの絶妙な一体感。
タイトル通り、
アイドルばかり追っかけている子供みたいな大人たちを可愛らしくたしなめる女の子の歌ですが、
悩める現代社会に鋭いメスを入れた歌詞にも注目です。
♪ ふつうの人は
CDなんて もう 買わなくなった
悲しいけどこれ、現実なのよね・・・。
と、思わずスレッガー中尉のようなボヤキを入れたくなる一言ですが、
♪ そうね
夢中になれる
モノがあると
ホントに素敵な人生
と、すかさずフォローを入れてくれます。
他にも、
どんなにCDを沢山買おうが、押しメンと決して結ばれることはない、という至極まっとうなメッセージで大人げない大人たちに冷や水を浴びせます。
ピチカートの『大人になりましょう』も思い出させます。
シニカルな内容ですが、Negiccoの3人の邪気の無いパーソナルからにじみ出た歌声が見事に毒を中和します。
そんな、現実を直視させるようなフレーズの後に轟く、
“ざんねーん!”
この楽曲のキモと言えましょう。
時空が歪むような脱力フレーズでアクセルを踏み込んで痛快なサビへ突入。
そして、最後にさりげなくNegiccoを宣伝するところがニクいですね。
小西さんのユーモアのセンスが冴えています。
そういえば、小西さんがアイドルに書いた曲には歌う本人の名前が入るのが多かったですね。
エンディングで歓声のSEが使われるのも『アイドルになりたい。 』と同じでした。
カップリングはconnieさんのプロデュースによる『新しい恋のうた 』。
ピチカートの『新しい歌 』という曲のタイトルを勿論意識しての。
シングル『恋のルール・新しいルール 』(1998)のカップリング曲でもありました。
つまり、今回のNegiccoのシングルは『恋のルール~ 』と同じ構造(尊敬する作曲家とのカップリング)を持っているという訳です。
小西さんにとっての京平先生に当たる方がconnieさんにとっての小西さんという訳で。
似ているのは曲名だけじゃなく、ピチカートの見事なパスティーシュに仕上がっています。
ピチカートのサウンドロゴ“new stereophonic sound specutacular”もNegicco自身が唱えます。
『ハッピーサッド 』をさらにさらにキャッチーにスウィートに煎じ詰めたようなメロディ。
聴いていて心がフワフワしてしまいそうにポップでスタイリッシュなハウス。
connieさんが凄いのはただ単に小西さんサウンドの上辺だけをなぞってるのではなく、ピチカートを知らなくても十分に楽しめる質の高い楽曲を作られているということです。
真似に終わらないセンスが感じられます。
小西さんのような曲ではなく、小西さんのように“イイ曲”が書けるのです。
Negiccoとconnieさんのお互いの魅力が引き出されたような珠玉のポップスです。
カップリング曲というのが勿体ないくらい、両A面クラスのイイ曲。
この曲を聴いてみて思うのはNegiccoの3人の歌声の響きの良さ。
澄んだ発声はピチカート時代の野宮真貴さんに通じるものがあります。
これもピチカートを愛するconnieさんの元で歌い続けてきた成果なのかもしれません。
とにかくこのシングルにはconnieさんの“ピチカート愛 ”が漲って、迸っているのですがそのディテールはこれだけじゃないです。
CDには上記の2曲のオリジナルバージョンとカラオケの計4曲が収録されていますが、
〈カラオケ 〉ではなく〈ネギ抜き-(inst)- 〉と表記されているのが面白いですね。
Negiccoが歌っていないから〈ネギ抜き 〉。
このアイディアは小西さんが考えられたそうです。上手い!
座布団を上げたいです、沢山。
さらに!
ボーナストラックとしてNegiccoの3人のヴォイスサンプルが6本入っています(計10曲)。
“new stereophonic soundspecutacular ”
“世界は今、1分間に45回転のスピードで回っていまーす! ”
等々。
ピチカートにはおなじみのフレーズが入ってます。
これは何かというと、ピチカートの2枚組リミックスアルバム『Pizzicato Free Soul 』(1992)のおまけで収録されいた『マクガフィン 』を狙ったのだろうと思います。
ピチカートのサウンドによく使われているSEとかブレイクビーツとかМCなどのフレーズを集めたサンプル集。
『ピチカートマニアの皆さん、こんばんは! 』そして、『new stereophonic soundspecutacular 』も勿論入ってます。
“マクガフィン ”とは、物語の中で、登場人物にとっては重要なものであるが、物語にとっては意味のないものの総称でアルフレッド・ヒッチコック監督が言い出した専門用語です。
ピチカートの場合だと楽曲のメロディ構成には意味の無いものだけど、サウンドを盛り上げるようなスパイスのような役目のモノといった感じでしょうか。
恐れ入谷の鬼子母神。
どんだけピチカートが好きなんですか。
歌詞カードに載っているスタッフクレジット欄の最後の行に“morale booster ”って入っていたり。
他にまだ気づいていないネタもありそうです。
勿論、ピチカートを知らなくても楽しめる純然たるアイドルポップスに仕上がっています。
そして今回のシングル、『圧倒的なスタイル 』同様にアナログ盤もリリースされています。
イイですねぇ。
嶺脇社長、ありがとうございました!
Negiccoはさらに7月にアルバムをリリース予定とのこと。
活動10周年でさらにネギはスクスク伸び盛り!
『アイドルばかり聴かないで 』《TPRC-0043》〈作詞・作曲・編曲:小西康陽〉(03’26’’)【2013】
いやー最高ですね!やっぱり小西さんのアイドル曲はよく出来てます。
今、CDを買うのは特典目当て(?)のアイドルファンだけなのかも。そして、どんなにお金かけても交流しても決して結ばれない・・分かるなぁ。そんなことをサラッと歌うとこがイイですね。人それぞれの「幸せのカタチ」ってあるんだよなぁ・・ちゃんとオチがあるのもナイス。本人の名前が入るの得意ですよね。「深田も」とか、あったしね。
ジャケ写もピチカートしてて素敵です。
by いとぞう (2013-06-04 21:20)
>いとぞうさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
ピチカートのファンとして、小西さんのファンとして、
こうしてまたポップな新曲が聴けることは無上の喜びですね。
やっぱりこれは小西さんにしか書けない音楽。
最近のアイドルソングに無い抜けの良さ。
アイドルファンが聴きたいツボを押さえた感じが堪りません。
by 都市色 (2013-06-06 00:25)