『抱きしめたい/井上睦都実』 [ピチカートファイヴ]
ピチカートマニアの皆さん、こんばんは。
小西さんのソングライティングを讃える特集、続いてます。
今夜は井上睦都実さんの『抱きしめたい(readymade mix) 』。
ちょっと前にも睦都実さんのシングルを取り上げましたが、同じく彼女のファーストアルバム『恋は水色 』(1992)に収録されている楽曲。
この曲はなんというか、小西さんの作品の中でも異色な感じがします。
ピチカートで聴ける、少し変化球気味のクセのあるメロディやメッセージは影を潜め、
すごくストレートなタイトルだし、メロディも故意に捻ったところがなく生成りの素直な感じ。
朝、目を覚まして窓を開けて、日差しを浴びながら新鮮な空気をいっぱい吸い込んで吐き出す。
そんな当たり前の何気ない動作のように自然で爽やかなポップス。
一抹の作為も感じられないような天然のポップスって感じがします。
初めて耳にしたけれど、どこか懐かしいフィーリング。
小西さんらしくないといえばらしくないのですが、かと言って魅力に欠けるかと言えばそんなこと言ったらバチが当たるような瑞々しいラヴソング。
特定の人を大切に想い慕う気持ちが次第に強くなってきて、不意に其れが『恋』という感情であることを認識したときの胸の高まりをメロディに変換したのが『抱きしめたい 』だと思います。
聴く人を選ばないような王道のポップス感。
手癖に頼らずにメロディが書けるのがプロの作曲家なのだな、と思いました。
小西さんは、
“自分でも珍しいほど屈託のないポップ・チューン。
シャニースの『I love your smile 』を先駆けるような―。”
とコメントを残しています。
この曲は元々は前年の1991年に前田香奈さんという女性シンガーのミニアルバムに小西さんが提供した作品でした。
アレンジも小西さんが担当。
オリジナル版の『抱きしめたい 』がそれほど話題にならなかった事が不本意だったのかもしれません。
前田さんのアルバムの翌年に早くも睦都実さんによるカヴァー作品を小西さん自身の手で送り出すということはそれだけ小西さんにとっても思い入れのある楽曲だったのだと思います。
シングルカットされたバージョンは小西さん自身によりリミックスが施されています。
ややリズムが強調されたサウンド。
個人的にはアルバムバージョンの方が楽曲のすっぴんの美しさが際立っていると思います。
たしかこのシングルのリリースの為に作られたPVがあるはずです。
それは小西さん自らが監督を務めていると思うのですが。
誰ぞアップして頂けませんか。
カップリングは『東京タワー(wonderful world mix)』。
以前紹介したシングル『ボーイフレンド』のカップリングもこの曲でしたが、こちらは作曲者の田島貴男さんによりシングル用に新たにリミックスされたバージョンです。
田島さんによるワウギターのイントロでちょっとファンキーすぎるかなと思いましたが、
中西俊博さんのヴァイオリンが入ったりしてこちらもスマートな仕上がり。
『抱きしめたい 』、また誰かにカヴァーして欲しいな、なんて思います。
真野ちゃんはどうでしょう、また歌ってほしいな。
大滝さんの『夢で逢えたら』のように、歌い継がれるべき名曲だと思うのですが。
『抱きしめたい』《SRDL 3606》〈作詞・作曲・編曲:小西康陽〉(05'11'')【1993】
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