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『彼女はデリケート/佐野元春』 [佐野元春]

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こんにちは、ブログです。
少し空いちゃいましたね。

最近、元春の過去に製作された映画を観ました。
『フィルム・ノーダメージ』(1983)。
同年にリリースされたベストアルバムと同名の映像作品。
まさか観られるとは。
1983年に上映されてから一度もリヴァイヴァルされることのなかった一本。
僕が元春のファンになったのは1988年から、その存在を知ったのは故・下村 誠氏による、元春の評伝『路上のイノセンス』でした。
長らくフィルムの所在が不明でしたが奇跡的に発見されたとのこと。

今回の上映には、
昨今のシネコンでの音響技術の飛躍的発展の恩恵で、映画館での高音質のライヴヴューイングが盛んになった背景もあるでしょうし、今秋行われる、3rdアルバムにして80年代を代表する名盤の一枚であるサムデイの再現ライヴとの関連も考えられます。

サードアルバムを発表後、ブレイクした元春の当時の活動を、
1983年3月の中野サンプラザでの『Rock & Roll Night Tour 』最終公演の映像を中心として、
あの当時の熱気とともに活写したドキュメンタリー作品。
ライヴシーン以外でも公演前後の楽屋のシーンやCМ撮影、そしてジョンとヨーコの“ベッドイン”をパロディにしたシーンなどが観られます。



上映時間が約70分ということで、ライヴシーンの充実は伝わりますが、それ以外のドキュメンタリーシーンがあっさりでやや散漫な感じがしました。映像素材それぞれは貴重ですが。
当時の日本の音楽シーンに於ける元春の存在の斬新さについてもう少し語られても良いと思いました。
元春へのインタビューももう少し聴きたかったです。
ジョンとヨーコのパロディシーンだけでは誤解を招きかねないですよね。説明不足です。
恐らく、このシーンの為に長らく上映が出来なかったのだと推察します。
やはり、映像の面、そしてジャーナリズムに於いて、まだ日本のロックは未成熟だったと云わざるを得ません。
元春の革新性を如実に伝える紹介者が皆無という訳では無かったですが、まだ少数でした。
今なら技術的にもっと充実した内容にできたでしょう。
それが元春が“早すぎた”所以でもあるわけですが。
彼のアイディアや創作のスピードにメディアが追いついていなかった証左です。

しかし、そんな幾つかの欠点はありますが、この映画は元春ファンにとってはかけがえのない一本です。
上り調子の荒々しい若獅子のパフォーマンス、ニューヨークへ渡米する直前の意気揚々たる表情を捉えています。
とにかく彼のスリリングで火花の散るようなパフォーマンスに釘付けです。
27歳のバクハツするクリエイティヴティがステージ上でも遺憾なく発揮されています。
ため息が出るほどに、瞬きも惜しいほどに。
キレのある、冴えわたる動き。
精悍な表情、スーツをバシッとキメて、踊り、歌い、疾走します。
ときにシリアスに、ドラマティックに、ユーモラスに、雄弁に。
彼のライヴでの一挙手一投足がいちいちカッコいい。
何が起きるか判らない、ドキドキさせる動きは、バスター・キートンみたい。
元春はかつてライヴでの自分を“トリックスター”と表現していたと覚えています。

そして、若きハートランドのメンバーたちとの一体感。
そして若きオーディエンスたちとの狂騒、興奮、一体感。
元春に導かれて、ティーンエイジャーたちがロックンロールの魔法にかかっていくのです。
ライ麦畑のキャッチャーたる元春。

シネコンでの音響も大迫力の臨場感でした。
観て良かったです。

やはり、元春のライヴは最高だな、と感慨を新たにしました。
十代の多感な頃に彼の音楽、そしてライヴを体験できたコトは本当に幸福だったとつくづく思います。
僕が彼のライヴに初めて行ったのは16歳、ナポレオンフィッシュ・ツアーでした。
今でもあのときの興奮が心に焼き付いています。
『フィルム・ノーダメージ』のあの中野サンプラザのオーディエンスと同様に。


ハイ、前置きが長くなっちゃいましたが本題です。

てなワケで、
お届けするのは元春のシングル、

『彼氏はデリカット』。

ゆた州ハ ソンナトコジャ ナイヨォ~!!

いや、『瓦礫でバリケード』。

ハッ、大変失礼致しました、

『彼女はデリケート』です!
眉間を手で押さえて、疲れ目のご様子?のジャケット。

ベスト盤『No Damage』にも収録されていますし、
初出は前年に出た『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』でした。
ということで、
大瀧詠一さんがプロデュース。
元春がアレンジと歌、
そして吉野金次さんがエンジニアを。
これはシングル用にエディットされたショートバージョン。

この曲は元春のハートランド時代のライヴの定番でもありました。
とにかく無条件にご機嫌なエイトビートのロックンロールです。
50年代末~60年代初頭、ロックンロールが最も輝いていた時代の楽天的で、ポップで、イノセントで、ワイルドで、アーバンで、クレイジーなサウンドのエッセンスの結晶ともいえる一曲。

この曲は、『No Damage』版も『トライアングル』版も、そしてシングル盤も内容が微妙に異なりますね。
一番好きなのは『トライアングル』版。
演奏時間が長くなってます。
エンディングの蒲田野次馬ブラザーズこと、ラッツアンドスターとの『Twist & Shout』のコールアンドレスポンスや冒頭の元春らしいユーモアを交えた口上も聴きどころ。

もちろん映画の中でも演奏されていました、カットされていたのが甚だ残念でしたが。



これは件の中野サンプラザから10年後、1993年の伝説の渋谷でのストリートライヴからの映像ですね。
ライヴバージョンはリッチ―・バレンスのロッククラシック『LA BAMBA』のフレーズを巧みに取り入れてさらにご機嫌なサウンドに仕上がっています。
ラテンサウンドがいい塩梅です。
元春の音楽が時代とライヴとともに成長していくのが判る一曲です。

B面は『こんな素敵な日には』。
ささやかながら幸福な、恋人との日々の営みをスケッチした一曲。
適度にロマンティックでセンチメンタルなジャズ演奏。
“チェット・ベイカー・シングス”の世界を気取った元春の軽やかで甘美なソングライティングにうっとりします。
これもナイアガラ・トライアングル・セッションから生まれた、大滝-元春-吉野トリオの逸品。
『No Damage』にも収録されています。
取りあえず粋な曲です。

あれから30年、佐野元春は今も現役で精力的に活躍しています。
彼の音楽性が形は変わっても芯はブレずに一貫していることが判ります。
20代の元春も50代の元春も肉体的には違いはありますが、精神的には変りがないのです。
これはとっても素晴らしいこと。
ファンでいて良かったと思います。


さて、今回の映画もそうですし、先に述べたサムデイの再現ライヴもそうですし、
間もなくエンディングを迎える人気ドラマ『あまちゃん』もそうですし、
1980年代前半~中期へ思いを馳せることが何故か最近多い気がします。
達郎さんの『メロディーズ』の再発もそうですね、あのアルバムがリリースされて30年でした。
時間の流れが大きく螺旋を描いて、80年代へ。
変わらないモノ、変わってしまったモノ、音楽を通じてあれこれと考えさせられます。

11月のサムデイの再現ライヴ、楽しみです。

『彼女はデリケート』《07-5H-110》〈作詞・作曲・編曲:佐野元春〉(02’45’’)【1982】


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いとぞう

まさか30年の時を経て、この映画が観られるとは思ってませんでしたね。
たしかにLIVEシーン以外は物足りなかったですけど。正直、「ソーヤング」や「スターダストキッズ」や「君をさがしている」の合間にベッドインのパロディが挿入される展開はちょっと・・でした。でも、とにかくLIVEシーンは圧巻!のひと言です。それだけで観る価値アリです。何と言っても僕が初めて憧れたミュージシャンだから。十代の頃、「こんなにカッコイイ、ミュージシャンがいたのか!」と衝撃を受けたその理由が、この映画を観ると分かります。
有楽町での最終日には元春本人が後方客席で観ていたそうで。上映後、驚く観客の前を颯爽と立ち去ったとかで、そのことがまるで映画みたいだな、って思いました。
「彼女はデリケート」はゴキゲンなロックンロールに男の苦悩をユーモラスに表現しているところが素晴らしいです。いつの時代も男というのは女性を理解できないし、振り回されるものだな、って。
by いとぞう (2013-09-22 20:48) 

都市色

>いとぞうさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
劇場に元春がいたなんで、凄いですね!
そりゃ、驚きますよね。
東京では追加上映もされるようですね。
あの頃のライヴ映像をもっともっと見せてほしいです。
by 都市色 (2013-09-26 23:40) 

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