『花とみつばち／郷ひろみ』：03'54''：So-net blog

	ブログをはじめるログイン

『花とみつばち／郷ひろみ』　[歌謡曲／70年代] [編集]

こんばんは。
岩谷時子さんを偲んで今回はこちらのシングルを。

郷ひろみさんの『花とみつばち』。
これも素晴らしいですね。
大好きです。

デヴュー曲の『男の子　女の子』を聴いたときの衝撃は凄かったです。
京平先生の甘ーいメロディに乗って、一面のお花畑の中に突然迷い込み、そして背後から鈍器で殴られたような・・・。
甘い甘い毒薬。
古い少女マンガの世界観。
作詞は岩谷時子さんでした。
郷さんの唯一無二の中性的な歌声も毒を喰らわば皿までって感じで。
ある意味、過激でクレイジーな世界で、おとろしい・・・・。
以降、初期の一連の郷ひろみ作品の歌詞を一手に引き受けて、王子様のイメージを構築していきました。

『花とみつばち』は1974年にリリースされた8枚目のシングル。
京平先生による珠玉のグラムロック歌謡。
英国ロックの流行をリアルタイムで巧みに取り入れており、さすがです。
ファズギターの歪んだ音色がギュンギュン迫ってきます。
フランジャーを効かせたサウンドも、“いかにも”って感じです。
サウンドのカッコよさに引けを取らないのが岩谷さんの歌詞。

唄い出しが　♪ どうでもいいけど～　ですから。
このさりげなさ、ナンセンスな感じが最高だと思います。
続いて、

♪　帰るの　いるの　夜明けだよ
　眩しいのは　裸の胸さ

とにかく十代の若さを、愚かさを、美しさを溢れんばかりに謳歌しまくる歌詞の内容に天晴です。
若気の至りいや、若気の頂きを極めていますね。

♪ 君と僕の二人が覚えたての蜜の味　ウォウォ　指をかたくからませ　背中にくちづけ

十代というゴールデンタイムを実に有効に利用しています。
“花”と“みつばち”という比喩も絶妙で上手いです。
実にスキャンダラスな歌詞ですが、京平サウンドの勢い、そして“郷ひろみ”という新世代のアイドルに託して、いやらしさを微塵も感じさせません。あっけらかんとして爽快で潔いです。
今の去勢されたJ-POPにはこんなにセンスのいいカッコいい歌詞は見当たりません。

ジャケットの郷さんの満面の笑顔を見直して、降伏する次第です。
この曲を知ったのは鈴木蘭々さんのカヴァーではなく、勿論、近田春夫＆ハルヲフォンの2ndアルバム『ハルヲフォン・レコード』収録のポップス・メドレーでした。最高ですね。

B面は『悲しみをわけて』。
こちらも岩谷＆筒美コンビ。
一転、失恋の歌です。
黒い一束の髪を残して不意に消えてしまった少女への失意。
“切断された黒髪の束”という小道具が実に衝撃的。
岩谷さんは宝塚歌劇団の出版部のスタッフ出身なので、こうしたドラマティックな世界観を生み出すのが得意だったと想像に難くありません。
グラムロックのA面の裏側では哀愁のブラスロックが展開されています。
こちらも流行に敏感な京平先生のサウンドメイキングが光ります。
愁いを帯びた郷さんの声色は色気があります。

魅惑の“HIROMIC WORLD”。

前回のジュリーも、郷ひろみさんもお二方ともデヴュー曲は岩谷作品でした。
どこか中性なイメージを持ち合わせる美形シンガーでもあります。
宝塚の世界に近い気がします。
偉大な作家の作品をディスコグラフィに保持し、現在も息の長い活躍をされています。
平易でメッセージ性の希薄な言葉使いながら、音楽と相まって劇的な響きを発揮する岩谷作品。
奥が深いです。

『花とみつばち』《SOLB-122》〈作詞：岩谷時子／作曲・編曲：筒美京平〉（03’01’’）【1974】