『浪人まかり通る/北島三郎』 [ドラマ主題歌]
新年明け~、あ、もう言いましたね。
こんばんは。
景気のイイ、明るいシングルを紹介しましょう。
僕はとんと最近のテレビドラマはご無沙汰なのですが、
CSのドラマは時々観ます。
現在、時代劇専門チャンネルで絶賛放送中、
『素浪人 花山大吉』はとっても大好きで観ています。
60年代終わりに制作された時代劇。
〈大吉〉なんて春から縁起がイイや。
時代劇にも色んなものがあります。
歴史があるだけに、これまで沢山の番組が作られたと思いますが、
その中でももっとも陽気で大笑い出来るドラマではないでしょうか。
いわゆる“股旅もの”で、浪人と渡世人の男二人の当てのない珍道中。
バディもの(2人組)のロードムーヴィって訳なんですが、
このふたりが実におかしい。
おかしな2人でも海の向こうのジャック・レモンとウォルター・マッソーにも引けを取りません。
マッソーも真っ青、なんて。
浪人の方は剣の腕は立つが、シャックリが止まらなくなるのが玉にキズ(気付け薬のお酒を飲むと治る)、それから無類のおから好きの花山大吉。
演じるのは近衛十四郎。
もう一方は曲がったことが大嫌いで(持っている刀も真っ直ぐ)でお調子者だけど蜘蛛が苦手な一本独鈷(どっこ)の旅烏・焼津の半次。
演じるのは品川隆二。
花山の旦那と半次兄さんのイカれたきままな珍道中。
珍道中という言葉がこれほど当てはまる作品もないでしょう。
とにかくこの二人の個性的過ぎるキャラクターに度肝を抜かれます。
漫才コンビと間違えそうなほどの台詞の応酬。
こっれが実にくだらない。
勿論褒めてます。
放送時間が約50分とすれば、冒頭の20分はお互いを罵り合いです。
どうでもいい様な内容で毎度毎度お互いを貶しています。
これが馬鹿馬鹿しくて嬉しくなってしまいます。
クールな二枚目のイメージがある品川隆二氏のオーバーアクション気味の演技に呆気に取られれば、
負けじと大人げないくらいに好物のおからにがっつく近衛十四郎にもドン引きします。
普段は泰然自若としてるけど、おからのこととなると急に人が変わってしまいます。
「おい、オヤジぃ この店におからは置いとらんのかぁ?
なにっ、置いとらんだと!
んん~ けしからん店だな~!!
繁盛せんこと請け合いだぞぉ!」
これが口癖です。
「このバカタレが~」
もそうです。
残りの30分で旅先の宿場町で起きた事件を解決します。
旅先で出会う連中も実に間が抜けてたりしてそのやりとりも最高です。
でも困った者を見ると黙っていられず、弱きを助け、強きを挫く頼もしいチャンバラぶりも楽しい。
特に近衛十四郎の剣捌きは豪快でカッコいいです。
彼が演じる花山の旦那は町の相談屋として生計を立ててますが、事件の謎を推理して解決するという、“探偵もの”の楽しみもあります。ここのところは『相棒』にきっと影響を与えてますね(ウソ)、どちらもテレビ朝日だし。
悪役は見るからに悪役って感じで判り易いです。
だいたい同じ役者が何度も出てきます。
判り易くてイイです。
近衛十四郎主演による素浪人ドラマはシリーズ化されていて、『素浪人花山大吉』は前作『月影兵庫』の続編です。
『月影~』と『素浪人~』だけで合計200話以上作られる人気ドラマでした。
花山大吉の脚本の殆どを担当している森田 新という方について50~60年代に映画やドラマで脚本を多く制作した人という以外判りません。
毎回ドラマのタイトルがヘンテコで、字体が下手くそで妙に味わいがあり、脱力感が溜まりません。
そんな名作ドラマを引き立てるテーマソングが詰まらない訳がない!
オープニングを歌うのはこの方、北島三郎さんです。
曲名は『浪人まかり通る』。
サブちゃん、張り切ってどうぞ!
雄々しく勇ましい節回し。
♪ 要らぬお世話さ どっちへ行こうと
天下御免の 浪人ひとり
でっかい青空 背中にしょって
曲がり道でも 待ったはかけぬ
まかり通るぞ まかり通るぞ 真っ直ぐに
豪快な歌詞ですね。
これぞ時代劇。
花山の旦那と半次兄さんの魅力をドッキングしてますね。
作詞は結束信二氏。
50~70年代に作られた、時代劇の映画やドラマで数多くの脚本を残しています。
『花山~』の脚本は担当してません。
映像での
刀で人を斬るとき、食いしばった歯を剥き出しにする旦那の表情がイイですね。
B面はエンディングテーマの『風来坊笠』。
唄ってるのは品川隆二兄さん。
朗々と魅惑のテノールを披露しています。
♪ 向こう意気なら 焼津の判次
引けはとらねえ 風来坊
それがどうした 男が惚れた
腕も気っぷも 腕も気っぷも
俺のうわてを ゆく旦那
ついつい鼻歌で口づさんでしまいそうな楽しい曲調。
この曲の作詞は佐々木 康氏。
この方も時代劇の黄金時代を支えた代表的な監督です。
早撮りの名手と呼ばれました。
このドラマでも演出で参加されています。
明るい曲調をさらにコミカルに演出する“ビヨン ビヨン”という音。
口琴という楽器が効果的に使われていますね。
ミュートのトランペットも。
そして両面とも作曲は阿部皓哉氏。
この方も時代劇の音楽を多く担当されました。
つまり、
A面にサブちゃん、B面に品川隆二氏と言う、奇しくも鼻の穴のビッグな者同士のスプリットシングルと相成りました。
ふたりのビッグショーです。
なんのこっちゃ。
ドラマ全体が明朗で呑気というか、トボケたムードで覆われていて、観たあとに日頃の嫌なことを忘れてしまいます。元気が出ます。
自由気ままに旅をする旦那と半次の二人に憧れてしまします。
実際は渡世人の旅なんて、長谷川 伸の戯曲や『木枯らし紋次郎』のように厳しくて辛いことの方が多いのでしょうが。
市川 崑監督の『木枯し~』のドラマも良いですよねぇ~。
♪ ど~こかで~ だ~れかが~
おっと、
それはそれとして、
とっても面白い時代劇ドラマなのですが、
残念ながらDVD化されていないのです。
実にけしからん。
という訳でこのドラマを時代劇専門チャンネルからDVDに録って楽しんでいます。
因みにこのドラマを教えて下さったのが、
やはり安田謙一氏の文章でした。
ありがとうございます。
その文章は著書『ピントがボケる音』に掲載されています。
ご覧になったことの無い方は是非、時代劇専門チャンネルでチェックしてみてくださいね。
爆笑すること請け合いだぞぉ!
『浪人 まかり通る』《CW-906》〈作詞:結束信二/作曲:阿部皓哉〉(03’34’’)【1969】
北島三郎~主題歌集~「兄弟仁義」「炎の男」「ジャンゴ~さすらい~」
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: 日本クラウン
- 発売日: 2015/03/04
- メディア: CD
ピントがボケる音―OUT OF FOCUS,OUT OF SOUND
- 作者: 安田 謙一
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2003/10
- メディア: 単行本
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