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『俺の呼び名はロンリーボーイ/荒木一郎』 [荒木一郎]

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こんばんは。
時刻は間もなく午前3時54分の『03’54’’』です。

荒木さんの音楽を取り上げるには秋はお誂え向きだと思います。
この辛子色の季節に。

前回のシングルはトリオレコード時代(1974~1976)のシングルでしたが、
今回はそれ以降のフィリップスレコード時代のシングルです。
レコード移籍第一弾のアルバム『口紅色の夜想曲』から『俺の呼び名はロンリーボーイ』です。
当時荒木さんは桃井かおりさんをマネージメントしていて、彼女の歌手活動も
荒木さんがプロデュースされていて、彼女の作品はフィリップスから出ていたという経緯もあるそうです。
このアルバムはさらに多彩な荒木一郎ワールドを楽しめる作品集です。
フィンガー5に書いた曲や、井上陽水さんの『ダンスはうまく踊れない』のアンサーソングのような歌もあったり、SFもあったり。
トリオ時代での作品より洗練された、明るい感じの曲が多い様な。
聴きやすい感じもあります。
桃井かおりさんという実に個性的な女優をマネージメントしたことで荒木さんにも少なからず影響があった事も『回り舞台の上で』では語られています。
それはもう大変だったそうです。
その御蔭で荒木さんも角が丸くなったそうです。

さて、話が逸れますが。
荒木一郎さんのことをイロイロと僕なりに考えていると、一人の男性のことに思い当たります。
まぁ、僕の考えですからだいたい的外れも甚だしいのですが・・・・。

その男性とは“大滝詠一”です。
大滝さんと荒木さんって意外と共通点があるのです。

まずは

1.母子家庭だったこと。
2.一人っ子だったこと。
3.アマチュア時代にはドラムを叩いていたという事。
4.飛行機が苦手だという事。
5.ラジオのDJとして人気があったという事。
6.そして《クルーナー唱法》を得意としていたという事。
7.作曲家、プロデューサーとして活躍していたという事。

どうでしょうか。
まだ他にもあるかもしれません。
全く同じではないけれど、お二人の実質的な音楽活動(個人名義としての)が80年代前半で終わっていることも何だか興味深いと云えます。
荒木さんは1966年から1983年まで。
大滝さんは1970年から1984年まで。
(もちろんその後もお二人は単発的に作品を発表されたり、編集盤を発売されたりしていますが)

一人っ子でお母さんもお仕事であまり子供に構っていられないという環境ということは、
家に帰っても誰もいなくて、自分で考えて時間を潰したり遊んだりする《発想力》や《孤独》と対峙する力が養われたのではないでしょうか。
大滝さんや荒木さんの一匹狼の様な孤高な在り方に生い立ちが関係しているではないでしょうか。
お二人とも名前に《一》が入ってるのも見逃せません。
ドラマーあがりと言うコトでやはりリズムに関しての拘りはあると思われます。
大滝さんは『ゴーゴーナイアガラ』、荒木さんは『星に歌おう』というラジオが伝説として語られますね。というわけでおしゃべりも上手ですし、面白い。
唄い方も似ています。
とても巧いし、きれいな歌声ですね。
そして表舞台だけで活躍していも十分なのに裏方の仕事も多くされています。
お二人とも作曲家としてプロデューサーとしての活動も有名なのも似ています。
文筆業も得意ですし、
荒木さんなんかは事務所を立ち上げて、女優のマネージメントもしたり映画の劇伴もされてたり。
とにかく。
お二人とも《パイオニア》なのですね。
当時のギョーカイに無い型破りな存在で。

そしてもうひとつ付け加えるのなら、

アレンジャー・井上 鑑との仕事です。
70年代後半、井上氏は学生時代から鍵盤の演奏やアレンジの仕事をしていましたが、
ちょうどその頃に大滝さんと荒木さんとの仕事を同時期にされているのです。

つー訳で。
前置きが長くなりました。
アルバム『口紅色の夜想曲』はアルバム一枚を井上氏が編曲を担当しているのです。
勿論このシングル曲『俺の呼び名はロンリーボーイ』も。
アルバムの冒頭を飾る曲でもありました。
そして珍しいカントリータッチのサウンド。
荒木さんと言うとジャズが得意なのですが、カラッとした陽気な曲調が意外でした。
この曲も荒木さんのストーリーテラーの魅力が歌詞に溢れています。
歌詞の中に“メリー・ルウ”という名前が出てきますが、
60年代に主に活躍したカントリーシンガーのリッキー・ネルソンに『Hello Mary-Lou』というヒット曲があります。
『俺の呼び名~』もこの曲調を少し匂わせています。
因みにリッキー・ネルソンは大滝さんのお気に入りのシンガーですね。
荒木さんは明るいサウンドとメロディの中に男の孤独をお得意のクルーナー唱法で歌っています。

井上 鑑さんによるカントリー&ウェスタン調のアレンジ。
スティールギターの眩い響きが印象的です。




アルバムでも井上 鑑さんのアレンジは冴えまくります。
井上さん以外でも荒木さんはこの時代様々な若手のアレンジャーをご自身の作品に起用してました。

B面は『まわり舞台の上で』。
勿論、前回の記事で話題にした荒木さんの本のタイトルはこの曲から由来しているのでしょう。
この曲はアルバム未収録で、編曲は林 哲司さんです。
作曲家として活動して間もない頃の仕事だと思われます。
ドラマ『青春の甘き香り』の主題歌に起用されています。
まわり舞台というのは舞台用語に出てくる言葉で、その名の通りに舞台装置が回転して別のシーンに転換する為の機構です。
ご本でのインタビューの中で荒木さんはまだ芸能界に入る前の若い頃に浅草などの演芸場などへ遊びに行って様々な舞台を観ていたそうです。
そのときのイメージを膨らませて作られた曲なのかもしれません。
もの悲しい調べに乗って舞台役者の恋の傷跡をしみじみ歌っています。



荒木さんが歌う世界にはやはり幼い頃から住んでいる東京の有りし日の風景が感じられます。
今はもう消えてしまった風景、喫茶店や洒落た街並み、大人の社交場、演芸場。
60年代から70年代にはまだ残っていた粋な世界。
酒とタバコのにおい。
そんな世界を求めるように『ありんこアフター・ダーク』を読み直します。

『俺の呼び名はロンリーボーイ』《FS-2061》〈作詞作曲編曲:〉(02’52’’)【1977】



まわり舞台の上で 荒木一郎

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  • 作者: 荒木一郎
  • 出版社/メーカー: 文遊社
  • 発売日: 2016/10/22
  • メディア: 単行本



ありんこアフター・ダーク (小学館文庫)

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  • 出版社/メーカー: 小学館
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口紅色の夜想曲

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  • 出版社/メーカー:
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